2019年02月26日

ひろしま都心活性化プラン(素案)への意見|2.エネルギー収支の改善のために

ドイツフライブルグ市のトラム
前回の投稿は、広島県と広島市が共同提案している『ひろしま都心活性化プラン(素案)』に関して、まずは「現状認識と未来予測」ということで、自治体の認識を質しました。

今回は、自ら欧州の活力ある地方都市を視察して感じた「エネルギー収支」に関して、自分の意見としてまとめてみました。画像は、ドイツの南西部、スイスとフランスの国境に近い人口20万人強の地方都市フライブルク市の新しい住宅地「リーセルフェルド」を走るトラム(LRT)です。

2.エネルギー収支の改善のために

特に自治体が出来ることとしては、自動車通勤に掛かる化石燃料費の域外流出を出来るだけ削減すること。つまりは(1)通勤距離を短縮できる住宅政策、(2) 自動車通勤に頼らない公共交通機関の整備、(3)都心部への自動車流入を抑制するパーク&ライドや次世代モビリティ等のハード・ソフトの整備、(4)再生可能エネルギーや燃料電池車など脱エンジン推進、等によって自家用車の維持や移動・駐車に掛かる費用を家計や企業の負担から可能な限り削減し、市民・県民の可処分所得を増やせるような政策を実現させること。ただしレジャーの車利用は大歓迎だ。

その結果、都心部で貴重な資源である土地を、コインパーキングにすることなく、お店や事務所として利用することが可能となる。都心部のコインパーキングの増殖は、まさに『都市の耕作放棄地』であり、雇用の場を提供せず、店舗も出店できず、自治体にとっては法人税収入や固定資産税収入も都心に見合わないものしか得られず、さらにお店の連続を断ち切って、車の出入りによって歩行者の安全を脅かし、賑わいを削ぐ「空き地」でしかない。歯槽膿漏で歯が抜け落ちていく老人と同じ状態だ。

解決策は、都心部への車の流入を抑制し、もっと幼児から高齢者まで、家族連れが徒歩でも安全・安心して移動できる都心の公共交通網、歩道、歩行者専用道等の整備だろう。今の時代でさえ、ドローンによる配送やセグウェーなどの移動手段、ウーバー等やタクシー・自家用車の自動運転の急速な普及が見込まれている。

自家用車を都心に駐車させて駐車代金や時間を気にするような時代も過去のものになり、もっとゆっくりと楽しめる都心にしたい。そのためには「楕円形の都心内」は、低料金で自由に乗り降りできる安全で利便性の高い公共の交通手段を用意する必要があり、欧州で急速に普及しているLRTやBRT(バス高速輸送システム)などを、環状線・中央線・東西線のように主要幹線に縦横無尽に走るような交通体系も検討しなければならない。企業が契約する都心の月極駐車場も、その場所・費用はばかにならない。

もちろん都心活性化プランには明確に記載できないとしても、建物自体の断熱性能強化は、欧州のように『エネルギーパス(建物の燃費表示)』など、明確な指標で推進していく必要あり。

次回は『3.雇用創出と貨幣の地域循環(地域外流出の抑制)』に続きます。

  

Posted by cms_hiroshima at 14:00

2019年02月24日

ひろしま都心活性化プラン(素案)への意見|1.現状認識と未来予測

広島市中央公園
前回まで『広島市立地適正化計画(骨子案)』への意見と私案を投稿していましたが、しばらくブログ更新の間が空いてしまいました。”立地適正化計画”とは、郊外に広がり過ぎた生活環境をコンパクトにし、インフラ投資や災害の危険性を抑制していこうという、国が音頭を取って各自治体が策定している計画です。

どちらかといえば「実質的な市域を狭める」という計画ですが、これには「都心部をどうするか」という視点が弱いため、広島市と広島県が連携し、独自に『ひろしま都心活性化プランというものを策定しようとしています。今回は、平成29年の初めに「素案」が公開され、意見公募が行われた時に、私が広島県に提出した意見を自分のブログで公開しておきます。提出は平成29年(2017年)2月なので、2年経過後の公開です。

1.現状認識と未来予測

21世紀に入っての15年間は、それ以前のバブル発生から20世紀末にかけての15年間と比べて社会の変化が加速度的になった。IT革命により、ドッグイヤーと呼ばれるほどネットの進展はすさまじく、また日本の超高齢化や人口減少、生産年齢人口の縮小や、経済のグローバル化から、移民急増による世界的な保護主義への移行など、これから訪れるであろう15年間はさらに激動の変化があることは容易に想像がつく。

そんな中で計画された30年後を想定した「ひろしま都心活性化プラン」を読んで、まずは統計データや様々な指標による分析や目標設定などは別にしても、大きな時代の変化を先取りし、ある程度の変化にも大きな影響を受けないような都市経営、市民の豊かさを構築しようという「気概」や「危機感」を感じることが出来ない。ほぼ現在すでに実現していることの延長線上でしか描かれていないように見受けられる。

米国に『アメリカ・ファースト』で自国利益を優先するトランプ大統領が登場した。グローバル経済で最も利益を享受しているはずの大国でさえ、貿易赤字を問題視し、自国の産業・雇用を守ろうと、貿易収支の改善を訴えている。


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Posted by cms_hiroshima at 17:00