京都で開催された輸入建材セミナーで講師をされた『NPO法人住宅生産性研究会』の戸谷理事長のお誘いで、湘南地区の洋風住宅デザイン研修ツアーに参加してきました。
参加者は全国から約40名。大手ハウスメーカーの担当者から、不動産分譲業者、地方の小さな工務店経営者まで、多彩な顔ぶれです。
写真は、最初の視察地、『ココタウンヒルトップアベニュー湘南藤沢』です。
欧米の建築様式を取り入れ、79邸の戸建て分譲地が、統一された街並みを形成しています。
中央のセンターコートから見た街並みの写真もご紹介しましょう。
センターコート周辺は、地中海様式の住宅街の中の「ネオメディテラニアンスタイル」と呼ばれる建築スタイルのゾーンです。
そのほかに「フレンチスタイル」や「スパニッシュスタイル」の建築スタイルの住宅が十数邸ずつ分譲されていました。
隣接した分譲地では『マイアミビーチ様式』の街並みが開発され、「シーサイドスタイル」と「シーランチスタイル」と呼ばれる外観の家が、やはり十数棟ずつ建ち並んでいます。
同じコンセプトで、マンションも建てられ、統一感のある洋風の街並みは、湘南の人たちには抽選になるほどの人気分譲地になったようです。
確かに、分譲地をくまなく歩いてみましたが、日本全国でよく目にする大型分譲地のように、複数のハウスメーカーや工務店の家が混在して、街全体がバラバラということもなく、テーマパークに住んでいるようなイメージさえしました。
輸入住宅に憧れる人や、アメリカなどの海外駐在経験のある方などには、とても魅力的な住宅地だろうと思います。
しかし、個人的にはある言葉が浮かびました。
それは・・・
「外来種」
昆虫や動物の世界でも社会問題になっていますが、日本の固有の種を脅かす、海外からの「強い種」です。広島周辺では、アルゼンチンアリが大量発生し、従来からいる日本のアリの生息域が奪われていっています。
観賞用として飼うことは問題ありませんし、犬や猫などの「ペット」や家畜なども、海外から来たものは少なくありません。だからうまく「共存」し、日本の社会に違和感なく溶け込めば問題は少ないのでしょう。
あまりにも「忽然と」輸入住宅の街が現れ、これが「日本の住宅産業を変える!」と言われると、少し抵抗を感じるのは私だけではないでしょう。
200年住宅を目指し、歴史と文化の中で生き残ってきた「建築様式」を採用し、統一感のある街並みをつくっていくという、そのコンセプトには大いに賛成です。
しかし、やはり日本にも長く続いた固有の歴史と文化、そして建築技術が息づいています。
左の写真は、視察の途中に横切った片瀬江ノ島の駅です。決して新しくも、伝統的なデザインでもありませんが、何となく懐かしさを感じる風景です。
建築や街並みも、昔の伝統的な日本建築を復活させようということではなく、少なくとも欧米の建築様式そのまま、あたかもテーマパークのように再現せずとも、日本人の「美意識」や「気候風土」に根付いた、新しい日本の街並みがデザインされることを望みたいですね。
今回視察した片瀬江ノ島周辺は、サーファーのメッカでもあり、洋風の住宅も似合いますが、すぐ近くに日本の歴史や文化を刻んだ古都、鎌倉もあります。
海外旅行に行っても、最初は現地のフレンチやイタリア料理に舌鼓し、おしゃれなスタイルに憧れますが、帰国が近くなると、やはり「味噌汁」に「お漬物」が欲しくなるのと同様でしょうか・・・?
飲食業界は、それでも「和食の鉄人」や「高級料亭」などが、和食文化を継承し、新しい時代の「和」のテイストを追求しています。
飲食業界と比較して、日本の住宅業界の問題のひとつが、伝統的な日本建築(数奇屋や社寺建築、入母屋の民家など)から、今の時代にマッチしたデザイン様式が育っていないということでしょう。
建築家や設計事務所の人たちも、コンクリート打ちっ放しをはじめ、鉄やガラスや石といった建築材料を多用し、どの国の建築か分からないような建物ばかりを設計してきました。
一部のハウスメーカーでも「和モダン」の住宅が提案されていますが、日本が欧米の住宅を真似ているように、逆に欧米でも真似されるような「日本の住宅様式」で街並みがつくられると、本当に落ち着く街になるような気がしました。
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