2014年08月19日

高台の住宅地開発の将来像は・・・?

広島の郊外団地お盆休みの最終日、天気も良くなったので、自宅近所の山に登り、開発が進む広島の高台の宅地開発を上から眺めてみました。

私の住む広島市は、平野部の少ないデルタ地形の街なので、戦後の人口増で高台が削り取られ、写真の通り今でも高台の宅地開発が続いています。古い団地は入居開始から40年を超え、高齢化や空き家、バス路線の廃止など、過疎地と同じようなコミュニティ存続の危機的状況を迎えています。

東北の復興で高台移転が進んでいます。しかし新交通システムが整備され、豊富なバス路線と、百万人を超える政令指定都市の財政力や不動産の流動性(=マーケット規模と購買力等)を持ってしても、郊外団地の衰退を止める「有効」な解決策は今のところ見つけられていません。

三陸海岸を中心とした東北の復興は、巨大な「防潮堤」と住宅の「高台移転」、移動手段としての「鉄道の復興」や新たな「道路整備」などが進んでいますが、好条件の揃っていた1980年代の広島の高台の宅地開発でさえこの状況で、かの地では10年後でさえ見通せないのではないかと感じてしまいます。

震災後の3年間、世界に誇る日本の財政力と情報収集力、知恵、技術力を結集して、土地所有者の問題を解決して進む政府挙げての復興計画も、目先の仮設住宅からの住民移転しか考えておらず、20年後の地域の姿、住民生活を想定した地区計画は「将来地元の人たちが考えるよ!」というのであれば、あまりにもお粗末な復興計画です。

広島市安佐南区の高台の団地群お盆休みに、終戦直前の各地の空襲や生き延びた人たちの証言などを目にする機会がありました。岩国市でも駅前で防空壕に逃げ込み、九死に一生を得た方の証言が紹介されていて、爆弾によって防空壕が埋まったものの、数時間後外から助け出され、這い出てみると周辺では数百人の犠牲があったと中国新聞に掲載されていました。

私は、大地震や津波被害の備えとして、戦時中の防空壕と同様、一時的な非難の場所として町内会や街区ごとに一定の『地下避難壕』を整備し、その周辺に低層高密度の集落(住居密集地)の塊をつくったほうが、経済的側面を含め、地域のコミュニティや自治体も持続可能になるのではと思います。

アメリカでは巨大ハリケーンや竜巻から身を守る映画のシーンで、必ず人々は地下に逃げ込みます。普段は筋トレや音楽を楽しんだり、収納場所として活用していますが、水密性を高め、水が浸入した時のバックアップスペースさえしっかりと確保しておけば、地上のどのような建物、構造物よりも地下空間のほうが、地震・雷・火事・津波・台風どの災害に対しても高い安全性があると思います。

いかに強度を高めて、津波が到達しない高さにした「津波避難ビル」や「防潮堤」でも、老朽化には耐えきれず、また”人命を救うため”の避難に要する時間は、数時間から数日間耐えられれば事足りるのです。数十年に亘る恒久的な強度や頑強な姿かたちは必要ないのです。

優先的には「人命を守る」機能が重要で、街全体を守る防潮堤や津波避難ビルが数十年後、数百年後でもその場所で持続(更新・強度維持)可能かも考える必要があります。

これまで多くの住民が住んで来た平野部の市街地に、出来るだけ密度を高めて建築コストを抑えながら、共用の中庭や裏庭空間もあるようなヨーロッパ型の連棟住宅を、地元の設計者と施工者が、地域の歴史文化や工法、素材を配慮して、新しい形の東北の街並みをつくっていく。

そしてその住宅地には、集落の住民が分散して逃げ込める「地下避難壕」を一定の間隔で設置して、非常食や避難のための道具、換気や非常用電源、緊急避難通路等を整備する費用を予算計上して、足の不自由な高齢者でも数分で避難できる計画を策定する。

比較的経済的余裕のある人たちには、自宅でも地下空間を造れるように地下室の設計基準や補助金を提供し、公共の建築物には必ず地下の避難空間を整備していくとしたら、おのずと『コンパクトタウン』となって、地域のコミュニティは再生され、鉄道や公共交通がつながっても、利用者が徒歩圏で利用できる従来よりも利便性の高い「まちなか」が再生されるのではないでしょうか?しかも復興に掛かるコストも時間も短縮できたはずです。

過疎や高齢化の進む地域の復興は、建物の再興だけでなく、人のコミュニティと公共の足、そして仕事、持続可能な行政機関まで揃う必要があり、地元の人たちが地元で伐採した木材と、地元の大工さんたちに協力を得て住宅地の復興工事や資材販売等に参加することは、県外のゼネコンやハウスメーカー、デベロッパーによる巨大防潮堤工事、高台造成工事、住宅建築工事と比べて、どれだけ地域経済にも地元の人たちの士気の向上、コミュニティの再構築にも役立つだろうかと思いめぐらせます。

費用対効果や持続可能性を考えても、人を高台に移転させ、人のいないところに鉄道駅を復活させ、風光明媚な海岸線に巨大な防潮堤を繋げることを疑問に感じる、広島の高台からの風景です♪

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