2017年07月25日

某ハウスメーカーの戸建単価が凄い!

戸建住宅単価上昇グラフ
日銀の黒田総裁が5年任期の最終年、異次元の金融緩和によって物価を上昇させて「デフレを2年で脱却させる!」と宣言してから、残すところ任期は半年となりました。しかし結局ご自身の任期では2%の物価上昇は達成できず、さらに一年先送りすると発表されました。

画像は、若干時期がずれますが、まさに”デフレの真っただ中”の2010年から2014年の、某大手ハウスメーカーの戸建住宅の1棟あたりの売上単価です。1万棟を超える住宅供給をしていて、平均客単価が毎年これほど伸びていると、どれだけ売上も伸ばしたのだろうかと思うと驚きますね!

【戸建住宅1棟あたり売上単価】
 ・2010年 3,172万円
 ・2011年 3,311万円(前年比134万円/4.2%上昇)
 ・2012年 3,344万円(前年比 33万円/1.0%上昇)
 ・2013年 3,450万円(前年比106万円/3.2%上昇)
 ・2014年 3,565万円(前年比115万円/3.3%上昇)

ちなみに1年間で平均100万円の単価増加で1万棟だったら、増加分だけで100億円の売上げ増です。株主向けの資料で書かれているので、たまたま予算のあったお客さんが、オプションを100万円分余計に発注してもらったというものではなく、この会社で建てた人”全員”の平均で、前年度よりも”物価上昇していた”ということです。東日本大震災の翌年を除いて、政府や日銀の物価上昇目標よりもはるかに単価が上がっています。

しかも戸建住宅だけでなく、賃貸住宅も、3・4階建て住宅も、それぞれ5年間一貫して右肩上がりです。
では、同じ資料で2013年度〜2015年度の3年間の戸建住宅事業の売上高(計画含む)も書かれていましたので、そちらも紹介しますね!

【請負型 戸建住宅事業】
 ・2013年度 売上高 5,176億円
 ・2014年度 売上高 4,270億円(前年比▲906億円/17.5%減少)
 ・2015年度 売上高 4,100億円(前年比▲170億円/4.0%減少)※計画

2013年度の売上5,176億円÷受注単価3,450万円を計算すると、約15,000棟の受注です。2014年度の売上4,270億円÷受注単価3,565万円では、約12,000棟と、3千棟も受注減という実態が明らかになります。この間、戸建住宅事業の営業利益率は一貫して下がり続け、逆に賃貸住宅事業は、売上げも営業利益率も上がり続けていました。

戸建住宅事業は、住宅展示場への出展やTVコマーシャル、チラシ広告など、集客のために莫大な費用が掛かります。さらに、そこで来場や問合せがあった人たちに、カタログや資料を送るだけでは買ってくれないので、全国で数千人の営業部隊を抱え、契約できるかどうかに関わらず、自宅に訪問し、土地の調査や無料のプラン、見積書の作成を行います。もちろん非営利団体で無報酬の人たちがボランティアで仕事をしている訳ではありません。

上記のプロセスで掛かる莫大な費用の多くは『固定費』として企業側に大きな負担となりますが、この段階では誰一人、1円の負担をする消費者はおらず、すべて企業側が営業経費として損を被ります。豪華な住宅展示場の入場料も「無料」なら、敷地調査やプラン作成も無料で、さらに工場見学やバスツアーなど、至れり尽くせりの”おもてなし”が無償提供されているのです。

ビジネス社会にいる人なら、すぐに気付く『損益分岐点売上が高い』企業であり、経営の安全性は低く、少しでも前年度の客数が減れば、客単価を上げるか原価を抑えて利益率を伸ばすしか企業の存続が厳しくなる体質です。これほどの受注棟数の減少をカバーするには、つまり材料や労賃は抑えて、下請け企業を泣かせ、客単価は増やすという両輪を回すしか、固定費のカバーが出来ない状態になりつつあるのです。

それが、人口減少や空き家の増加など、すでに新築の着工が減っていく時代に売上高を維持するためには、”商品価値や適正価格が分からない客相手”に「客単価を上げる」か、集客コストが少なく、建物の性能・品質や見積内容よりも”利回りを重視”する「賃貸住宅を増やす」という行動に繋がり、さらに100万戸以上お引渡ししているOB客のリフォーム事業や海外展開でお金を稼ぐしか生き残る道は残されていないのです。

スーパーで買う食料品も、車や家電も、去年よりも高くなったか安くなったか、多くの人が判断でき、ネットでの比較も容易ですが、戸建住宅は他社との比較はもちろん、同じ会社でも去年どのくらいで契約されていたのか全く分からず、適正価格も分からないまま、言い値で契約を迫られます。この株主向け資料を見ると”数年で1割以上上昇している”というインフレ状態です。

これは市場原理ではなく、完全に企業側の都合による「人為的な価格操作」によってつくられた建築価格といっても良さそうです。私自身も、このデータやグラフを見つけるまで、これほどの状態とは予想していませんでしたが、逆に言えばこの”ハウスメーカーというビジネスモデル”(=住宅展示場集客モデル)自体が、賞味期限を迎えて、終焉を迎えようとしていると考えても良さそうです。

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Posted by cms_hiroshima at 14:35│Comments(0)