2019年01月10日

広島市立地適正化計画(骨子案)への私案|3.郊外の誘導施設の設定

THEアウトレット広島
前回の投稿『テーマ−2:公共交通網の将来ビジョン再構築』に引き続き、3つめのテーマで書いた意見をご紹介します。

テーマ−3:郊外の誘導施設の設定

広島市の郊外、安佐南区の人口は23万人を超え、人口規模でいえば『中核市』の要件をクリアしている。現在欧州の地方都市でいえば、人口10万人程度の都市でも路面電車の整備が進み、人口20万人の都市で、公共交通網が整備された中小都市は、中心市街地が栄えている。それは日常の買い物だけではなく、勤務先や仕事帰りの盛り場、レクリエーションの場も中心市街地に集まっている。半径3Km程度に一定の中心市街地があれば、通勤の移動時間、移動コストも抑制され、都心の渋滞緩和にも繋がるだろう。

現在の日本のベッドタウンは、そこから都心への通勤を前提とした”単一用途”で”同質の住民の集合”となっている。生物も都市も「多様性」による新陳代謝、環境変化への柔軟性が生存の持続性に繋がっており、多様性のない街、住民の状態を変えていく必要があるだろう。

ニュータウンに入居したばかりの人々(広島では、祇園ニュータウン春日野、セントラルシティこころ、西風新都グリーンフォートそらの等)は購買力もあり、子供もいることから家族で郊外のショッピングモールに行き、買い物やレジャーを楽しんでいる。つまり車での移動でしか買い物ができない状態になっていても、それを楽しむ余裕がある世代だ。しかし20年もすれば子供たちは大学進学や就職で自宅を離れ、やがて定年を迎えて、ショッピングモールでの買い物の機会は減ってくる。

さらに後期高齢者になれば、車に乗ることも控え、ネット通販や宅配に頼るか、近所のコンビニ利用というのが、昭和の時代に分譲された郊外団地にすでにみられる現象で、それはそのままカーボンコピーされる可能性が高い。米国のアマゾンを始めとして、将来の小売流通業がどのように変遷していくか、今のところ不明ではあっても、そのような状況で郊外にある巨大なショッピングモールがそのまま出店維持できるとは思えない

すでに呉市や福山市でさえ、JR駅前の大型商業施設は売上が維持できず、県外の大手百貨店でさえ撤退して空きビルとなっている。その状態が、今後広島市の郊外で発生しないという確信は得られない。その段階で行政が打てる手がないのであれば、現状の延長線上での計画は見直さなくては、今の意思決定が将来大きな負の遺産をつくるだけだろう。

従って、通勤だけでなく買い物も含めて、一定の距離に商業集積やビジネス施設の集積を誘導し、起業・開業や正規雇用の働く場を提供できるような地区計画、誘導施設の設定が急務だ。

現在のような巨大な資本力を持つ県外の上場企業の進出を期待し、大型小売店舗の誘致や巨大物流施設・倉庫の誘致をしても、地元ではほぼ「非正規雇用」しか生まず、物流の大きなイノベーションが起こり、人口減少で売上が下がれば、簡単に撤退していくのはすでに他地域で起こっている現実だ。その跡地利用に悩まされるのは、誰か考えたほうがいい。

むしろそのような大企業に勤めた経験のある人や、ノウハウを持つ経営コンサルタント、元経営者などを指導者として登用し、地元主導で地域色豊かな店舗運営を目指したほうがいいだろう。首都圏で大きなプロジェクトに携わりUターン、Iターンしている人は少なくない。アストラムライン延伸に投じるお金は、新たに中心市街地をつくったほうがはるかに有効だろう。


『立地適正化計画』は、人口減少により、人が暮らす地域を少しずつ狭めていくよう誘導していく都市計画です。つまりダウンサイジングとかリストラクチャリングと同じく、戦略的な撤退や縮小を丁寧に進めることが欠かせず、シェアリングエコノミーのような新しい社会環境の変化や技術の進展も予測することが肝要です。
第二弾!
家づくりで後悔しないための「優秀営業マンを見分ける5つの質問」
Posted by cms_hiroshima at 17:00