2019年04月21日

笑顔あふれるエコタウン『Eco-Viikki』

Eco-Viikkiケバトゥリ広場
北欧の国フィンランド旅行の報告第二弾は、首都ヘルシンキ市郊外の実験都市『エコ・ヴィーッキ』の訪問です。ヘルシンキの中心部から北東に直線距離で約8Kmの未開拓地、ヘルシンキ大学の実験農場として利用されていた約24ヘクタールの土地に、エコロジカルでサスティナブルな住宅地で約800世帯、1,700人の人々が暮らすエコタウンです。

1994年からフィンランド政府環境省とヘルシンキ都市計画局が中心となってコンペ開催によって開発がスタートし、2003年に完成した国家的実験プロジェクトで、今でも環境評価のモニタリングが行われている先進的サステイナブルタウンです。

公共交通機関が発達し、1日公共交通乗り放題のワンデイチケット9€(約1,100円)を買えば、ヘルシンキ都市圏のトラム(路面電車)、地下鉄、バス、近郊フェリーが乗り放題でした。人口60万人の都市で、トラムは網の目のように11路線、地下鉄まであるのです。私もホテルでワンデイチケットを購入し、このエコヴィーッキへも地下鉄とバスを乗り継いで、ひとりでこの街を訪れてみました。ヘルシンキ中央駅から乗り換え含め1時間弱のミニ旅行です。

Eco-Viikkiノッコクヤ住区ヘルシンキ中央駅の地下から発着している地下鉄はまだ一路線だけでしたが、途中から地上に出て高架から郊外の住宅地や商業地などが目に入りました。日本のロードサイドと違って、自然環境の中に計画的に建物配置されている「環境意識の高さ」と「都市計画マスタープランが機能している」ことが感じられます。

地下鉄駅からバスに乗り換え、15分くらいでエコ・ヴィーッキに到着しました。広島県内でいえば、ちょうど東広島市のJR西条駅から、バスに乗ってブールバールを通り広島大学の学園都市に行く雰囲気で、ヘルシンキ大学の学園都市にできた住宅群という印象です。

住宅地は、幹線道路に面する建物は画像の通り城壁のように中層の集合住宅(賃貸や分譲が混在)が建ち並んでいます。そして敷地の東側に広がる用水路を挟んだ農場や雑木林側は、木造の低層住宅が建てられていました。やはり緯度が低く(北緯60度15分)、貴重な日射を得られるように、南や東に行くほど建物が低く、北側や西側に行くほど住宅の密度が高くなっているのです。4月にも関わらず、気温は日中でもほぼ0℃、駐車場には除雪した雪が残っています。

Eco-Viikkiケバカツ住区Eco-Viikkiケバカツ庭路入口
画像は、西の端っこに当たる「ベルソクヤ庭路」を挟んだ低層の住区です。
長屋形式の連棟の建物で、この住区は賃貸住宅のようでした。フィンランドの都市計画で、このような団地を作る場合、おおむね民間の開発と自治体の開発を半々にし、またその中でさらに分譲と賃貸を半々にして、住人の経済力や年齢層、家族構成などが出来るだけ多様化するような住宅供給を行うそうです。

そうすることで地区間の格差が生じず、社会階層間の疎外・断絶が起きないことで共同体意識が生まれ、社会的に持続可能な地域になることを目指しています。しっかりと安心できるコミュニティ(共同体)があることで、犯罪も少なく、良好な環境も維持できて、ここに住み移りたい人が増えることで資産価値も上昇するという好循環が生まれているのです。

Eco-Viikkiヴィーキンオーヤ水路Eco-Viikkiベルソクヤ住区
住宅地の西端は、日本の田園地帯のように元々直線の用水路があったそうですが、公園として整備されあたかも自然の地形のような湿地帯がバッファゾーンのように隣の地区と分けられていました。公園といっても遊具や広場があるわけではなく、犬の散歩やジョギングなどをするような空間です。日本のようにステレオタイプな公園で「何か設置しなければ」という切迫感はありません。

団地の東南角地は、この団地の中で最も自然環境に恵まれた場所で、経済力のある人たちが住む『セルフビルド区画』です。セルフビルドといっても、自分で大工仕事をするDIYではなく、コーポラティブ住宅に近い形で、複数の購入希望者が集まり、設計事務所に依頼して自分たちの希望に応じた「注文住宅」を建てられる街区です。

Eco-Viikkiニチレイニキ住区

ほとんどの住宅が、日本の分譲マンションや建売住宅のように、すでに用意されたプラン、完成した建物から選ぶのが主流の欧米では、注文で自由に家を建てられる街区、自由設計の住宅は高所得者である証拠です。このような貴重なケースのみ、個人住宅で建築家・設計事務所の仕事の場があり、日本のように一般サラリーマンが設計事務所に自宅の設計を注文でお願いするということはまずありません。

また自由設計で、自分が建築費を負担するからと言って、外観や外壁・屋根の色が自由になるわけではなく、やはり都市計画上の制約があり、このような住宅地ではデザインコードなどもあるから、建物が地域の調和を乱さないようにしなければなりません。建物の外観は「個人のもの」ではなく、その地域に住んでいる人たちの「社会的共有財産」として、長くその地域の風景やイメージを形作るという発想が欧米人には当たり前になっています。

つまり自分たちは「社会の一員」であり「他人や他の建物を尊重することで、自分たちも尊重される」というソーシャルな文化の中で、共通の利益を守っています。それは環境であり資産価値で、外から見える場所に洗濯物を干さないといった暗黙のルールなどにも表れています。残念ながら日本の新興住宅地では失われつつある「品格」のように思います。

日本の銭湯が果たしてきた役目は、単に「お風呂を持たない人たちに入浴機会を与える」というだけでなく、ご近所の人たちが顔を合わせ、お互いの近況や家族のことを知って、場合によっては助け合いもする「コミュニティの場」でした。フィンランドも「サウナ」がそのような場所で、この住宅地の中にもプライベートサウナだけでなく、住区の住民たちが利用できる共同サウナなど、多様なコミュニティ施設が配置されています。

見た目に自然環境豊かなランドスケープデザインや、Ua値・C値といった建物の断熱性能・日射取得、そして地域全体のコ・ジェネ(温水による地域冷暖房システム)の整備といった、プロの施設計画による「エコロジィ」や「サスティナビリティ」だけでなく、多様な人たちがそれぞれの価値観を尊重し、新しく移り住んでくる人たちも快適に暮らせるコミュニティが存続していくことが、本当の意味で『持続可能な住宅地』になるということを、このエコタウンは教えてくれました。

Eco-ViikkiエコケイダスASO_Eco-Viikki

日本でも、このような住宅地の開発計画が出来れば、空き家の増加や団地の高齢化、孤独死といった社会課題はかなり防げると思いました。なお、ヘルシンキは土地所有の7割は公共団体で、個人の住居の過半は50〜100年程度の期間、定期借地権で地代だけ払うという、英国のリースホールドと同様な仕組みだということでした。

長期になれば価格変動によって大きな損失や、金利負担、固定資産税負担のある「土地」を所有しないということも、国民の経済的豊かさにつながることを、福祉国家フィンランドで感じることが出来ました。



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Posted by cms_hiroshima at 13:00