今、多くの人々が海外旅行を楽しむようになり、特にヨーロッパの街並みなどを見て「私もこんな美しい街に住みたい!」と感じる人は少なくないでしょう。エーゲ海やフランスのプロバンス地方、ドイツのロマンティック街道沿いなど、古い街で建物も老朽化しているのにも関わらず、
町全体が『絵画』のような美しさを維持しています。
画像は広島市郊外の新しい住宅地。広告のコピーは『ハウスメーカーの個性豊かな最新モデルハウス23邸公開中!』という、
技術立国日本が誇る住宅メーカーが最新技術と流行のデザインを生かして新しい街並みが出来ていますが、ヨーロッパやアメリカの街並みのような美しさや調和は残念ながら感じられません。
一番大きな要因は
”屋根形状と屋根の色・素材がバラバラ”だということが大きいのだろうというのが私の見立てです。欧米の街並みは、個人が建てる家であっても街並みは「共有財産」として、屋根形状や外壁に使われる材料など統一感のある「ストリートスケープ」をつくります。電柱も表通りには出さず、街路樹で緑を演出し、
街全体が魅力的に資産価値が高まる(=将来高く売れる)ように、開発業者が家づくりのルールを定め、調和ある街並みを形成しています。
日本の住宅地は、まるで「私服で自由に集まって下さい!」と集められた集団で、統率もなくアイデンティティも感じられません。各々がバラバラでまとまりがないから、集団としても魅力がないグループに感じてしまいます。
一方、欧米の住宅地は「フォーマルなファッションで集まって下さい!」と呼びかけて集まってきたグループで、それぞれがオシャレで個性を生かしていながら、全体としてまとまりがあり、集団としてのアイデンティティ、行動にも一定の規律を感じさせます。決して囚人服や学生服のように、無個性で皆が同じ(=日本の従来の建売住宅)というものではなく、それぞれは違うデザイン、アクセサリー、髪型であっても、フォーマルなルールがあるから、全体がオシャレな集団に見られそれぞれの個性を殺しあうこともありません。
だからこそ、欧米の住宅地は街全体が古くなっていっても、
価値自体は劣化せず、時を経ることで味わいのある住空間、住環境が熟成されるのです。時を重ねた美しさが、新しい住宅では決してつくれない価値を生むのです。
さらに、このような街づくりをするほうが、建築コストはもちろん安くなり、エネルギーのロスは少なくなって、将来高く売却できるということを、欧米の人たちは知っています。日本の住宅業界が自社の利益や他社との差別化ばかりを考えず、購入者の利益と地域の風景をつくることに価値を見出せば、もっと日本の街並みは美しく変わるでしょう。
Posted by cms_hiroshima at
18:32
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