報告が遅れましたが、先月『NPO法人住宅生産性研究会』主催の視察研修会参加のため、横浜に出張してきました。
定期借地権を利用し、三位一体の持続的な街づくりをした先進事例の視察です。
通常の住宅取得は、土地と建物がセットなので、新たに土地を購入すると建物に掛けられる金額が土地代金に大きく左右されます。立地条件のいい場所を購入すれば、建物をコストダウンせざるを得ません。
定期借地権は、土地を購入せず、長期間に亘って地主から土地を借りて建物を建てるため、建物に予算を掛けることが可能です。
しかし、従来の定期借地権付住宅は、
50年後に更地にして地主に返還するという条件になっていることがほとんどで、不動産・住宅販売会社にとって「見かけ上安く販売できる」ということや「建築に掛けられる予算が増えることで利益アップ」という業者都合で、消費者にも地域社会にもそれほどメリットのないプロジェクトが多かったように思います。
今回のプロジェクトは、200年住宅を謳った
『長期優良住宅』普及を目指す新しい時代にマッチした将来有望なプロジェクトでした。
今回の計画は、横浜の中堅建設会社『工藤建設(株)』が横浜市青葉区の300坪ほどの土地に6戸の住宅を配した【Garden Hill】という定期借地権分譲地です。
右の画像が、建物の配置計画です。
通常の戸建て分譲であれば、6区画に分筆され、それぞれの敷地に道路の接道が必要で、しかも隣棟間隔の確保や斜線制限などの制約条件があって、今回のような中庭のコモンスペース(共用庭)に面してアプローチをとるといった計画は困難です。
6区画それぞれが、土地を自己所有すれば、敷地内でどのような土地利用しようが、どのような建物を建てようが、個人の自由となり、建築条件もついていなければ、それぞれが契約したハウスメーカー、建設会社が、バラバラなデザイン、色、形状の家を建築し、どこにでも見られるようなミニ分譲地になってしまいます。
建築協定などで縛りをつくっても、街並みの統一感を出すのは容易ではありません。
こちらの100年定期借地権分譲では、横浜開港150周年も意識して、
100年後も残したくなるような建物のデザイン・構造や素材、統一した街並み、そして維持管理の仕組みなどを導入しています。
それが可能になったのは、土地が個人所有ではないことや、50年で更地にして返還しなくてもいい定借の考え方、100年後の契約終了後は建物自体が地主に帰属すると言う条件となっていることなど、しっかりとした考え方が開発計画に組み込まれているからです。
通常の土地活用では、アパート経営がほとんどですが、
建築コストは地主が資金調達して建てなければなりません。大きな負担はしながらも、建物自体には思い入れがなく出来るだけコストを抑えて建てて「賃貸収益を最大化」することを目論むので、住宅のグレードや街並みへの配慮などは二の次です。
建築後20年も経って老朽化し、空室が目立つようになると、負の遺産になってきます。修繕費用も解体費用も地主自身が負担しなければなりません。借主や不動産仲介業者からも、維持・修繕を求められます。
今回の100年定借の場合は、土地オーナーは自ら建設費を負担することなく、街並み全体のマスタープランを提示し、入居者が資金調達して優良な街並み、統一感のある住宅を建設してくれます。
マンション同様に、土地の賃料とは別に毎月管理費を徴収することで、敷地内の植栽や共有スペースの維持管理が可能となり、個人所有の建物の維持管理に関しても、土地オーナーとして口出しすることも可能です。
こちらでは
『住宅地経営管理基本契約約款(コミュニティルール)』というものを作成し、強制力を持って長期に亘って維持管理できる仕組みがあり、ルールを守れない入居者に「イエローカード」や「レッドカード」を出せるようになっています。
都市郊外の土地所有者にとって、これまでは「農業を続ける」か「アパートや駐車場経営」を行うか、「土地を切り売りする」といった選択肢しかありませんでした。
土地経営
(所有している土地から、効率よく収益をあげて、子孫に残していく)という観点から考えれば、自ら資金調達する必要がなく、先代から続く土地を手放すこともない定借事業は、新しい選択肢として有望な考え方だと思います。
また土地経営の観点だけでなく、孫やひ孫の時代になっても守られる風景をつくることは、地主にとっても価値の大きいことではないでしょうか?
もう、アパートを建てては壊す時代ではなくなってきましたね♪
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