北米視察2日目は、シアトル郊外の小高い丘の上にある分譲地『イサクワハイランド』に行きました。サブプライムローン後の景気後退で、カリフォルニアなどでは不動産価格が底なしに下落する中、この団地は「消費者の購買力」に応じて、アメリカでは考えられないような狭い敷地に、三階建てや連棟住宅(テラスハウス)を分譲していました。左の写真は、建築中の建物の写真です。遠くに山が見えるように地形的には日本の丘陵地に開発された分譲地と変わりはありません。
これまでのアメリカの家は、広〜い土地に何台もの車を駐車し、土地を贅沢に使っているイメージがありました。しかし、こちらの分譲地では、日本の郊外団地と変わらないくらいに敷地を小さく分割していました。しかし単に住戸の密度を高めるだけではなく、共有のポケットパークや緑道を設け、起伏のある地形を生かした住宅地にしているのが、雛壇造成して日当たりの悪い敷地が残る日本の住宅地との大きな違いです。
右上の写真は、建築中の三階建てと、モデルホームとして使っている完成住宅。
外観は異なっていますが、間取りは全く同じでした。間の空間にもう1棟住宅が建てられる予定です。
左側の写真は、建築現場の仮設足場です。日本と違ってずいぶんと簡易で驚きます。
米国の住宅供給の要は、日本の工務店にあたる『ホームビルダー』。この分譲地は、カムウエストという会社とベネットホームという2社が40戸程度ずつ建物を建て、分譲していました。
日本で言う『売り建て方式』とほぼ同じで、土地自体にそれほど価値がない米国では、土地を仕入れて
「住宅という資産価値のある不動産」に加工することがホームビルダー(建設業者)の役割です。
つまり、レストランのオーナーやシェフと同様に、農産物や魚介類を仕入れて、お店なりの加工や味付け、盛り付けをし、ホスピタリティ溢れるサービスによって、お客さんがその価値に応じたお金を払うというイメージが近いような気がしました。だから、仮設トイレや足場、養生など、日本の仮設工事に当たる費用は出来るだけ省けるように合理化しています。
また住み替えが前提のアメリカでは、次の住宅もそのホームビルダーの物件を求めるかどうか(つまりリピート受注の機会が多い)が顧客満足のバロメーターになるため、建物の建つロケーションや住宅のデザイン、周辺の環境などがとても重視されるようです。
日本では、消費者は「土地」(つまり農産物や魚介類などの素材)が重視され、それを料理店に持ち込むような構図です。だから工務店側はロケーションや周辺の環境には関心が薄く、「建物」(つまり皿の上の料理だけ)を他と差別化したいという要望に駆られているような気がします。
土地と建物とが一体として加工され、それがリピーターとなって経営が安定するという米国のホームビルダーの存在と業界構造が、土地の大きさに関わらず北米の美しい街並みをつくる原動力になっているようです。
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