明日で東日本大震災から1年が経ちます。テレビの報道でも、震災関連のニュースが連日放送されています。先日見たNHKのニュースで『津波避難ビル』の設計指針について解説されていました。三陸海岸では、鉄筋コンクリートの建物でも津波で倒壊(横倒しでひっくり返った)したビルが少なくなく、15mを超える大津波ではRC造でも「浮力」と「津波の衝撃(圧力)」で倒されてしまい、大津波に耐えられるような避難ビルを建てようということのようです。
具体的には、浮力で建物が引き抜かれないように、杭打ちの本数を増やすとか、壁の厚みを増したり、高さを8階建て以上にしなさいなど・・・。
しかし、自然の驚異的な力に対して「強度で対抗する」という設計指針が本当に安心で経済合理性があるのでしょうか?先週もアメリカで竜巻が発生して多くの死者が出たようですが、アメリカの映画を見ると竜巻が発生すると地下に逃げ込んで、猛威が通り過ぎるのを静かに待ちます。
写真は、福岡県糸島市で計画中のリースホールドによる街づくり。災害対策とは関係ありませんが、土地の高低差を解消するために地下工作物(つまり地下室)をつくり、宅地造成の代わりとしています。
この上に1階床のプラットフォームをつくって木造住宅を建てますが、津波や台風のように一時的に猛威を振るってしばらくすると去っていく巨大災害には、シェルター代わりに地下に避難場所を確保するというのも一案です。地震に対しても強く、対応できないのは火山近くの火砕流くらいでしょう。
スーパー堤防を築き、津波災害を想定して地盤を高くして杭工事を施し、津波の3倍の力に耐える建築物を義務付ける。300年に一度の大津波に備えて過剰な強度の建築物を建てて、50年も経つと老朽化して当初の強度は不足・・・。
本番の大津波が来るまで5〜6回も建替え、補強や補修をして、その費用を考えると、水密性を高くして地下に避難できる構造物をつくり、タンカーのように内部をいくつも仕切って、水の浸入を堰き止めるほうが、建築コスト的にも将来の管理・補修コストも抑えられるのではないかと私は思います。
建築物の耐震化でも、耐震性能を高めるほど弱い部分に損傷が集まり、必ず想定を超える巨大な力がいつかは加わるのが自然界。免震や制震など、力を逃がしたり別のエネルギーに変換するなど、もっと考えられそうです。津波は波が引くまでの時間、長くても数時間の巨大エネルギーをやり過ごすことが出来、水密性が確保できれば、人の生命と大切な財産の一部は守れます。地下であれば、津波の脅威も地震の横揺れも地上の比ではありません。
津波の危険性のある地域では、この写真のように生活を守るインフラとしてすべての建物に地下を設置して補助金を出したほうが、よほど公共投資も抑えられ、多くの市民を守ることが出来るのではないでしょうか?夏も冬も温度変化が少なく、発電機や雨水タンクなども整備しておけば、一時的な避難場所として数日間は十分耐えることが可能です。いかに災害に強い町を、持続可能な負担でつくっていくか、もっともっと多くの知恵を集めたいですね。
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