

5月2日、黒川温泉の街めぐりをした後、旅館の外湯で「檜湯」に浸かり、先客に「どちらからお越しになりましたか?」と声を掛けてみると、何と熊本市内の避難先から、久しぶりに大浴場に入りに来たという方でした。
熊本市内を流れる白川の河口近くに自宅があり、4月16日未明に発生した本震では、深夜に「津波警報」が発令され、慌てて家族で車に乗り、夜明け前に大渋滞となったことや、
自宅の損壊は免れたものの、水道が回復しないためトイレも使えず、やむなく10日間は車中で眠ったこと、それでも余震が怖くて真っ暗にして眠ることが出来ず、今回宿泊キャンセルが相次いでいるという温泉に、少しでも貢献できればと思い家族でゆっくりお風呂に浸かりに来たといった、震災直後ならではのリアルな状況を聞くことが出来ました。
朝食を済ませ、小国の市街地を経て外輪山の大観峰に行くと、多くの自衛隊車両がキャンプを張り、災害支援にひっきりなしに出かけていました。
外輪山から平地の阿蘇市に下り、阿蘇の登山道経由で被害の大きかった南阿蘇村に向かおうとしましたが、登山道はすべて閉鎖。草原が美しい「草千里」や「米塚」なども地割れがあり、落石の危険性もあるようでした。



以前も訪れたことのある一の宮町に向かうと、テレビで大楼門が倒壊した『阿蘇神社』の看板が見えてきたので、被災者や復旧支援の迷惑にならない範囲でと、車を回してみました。
阿蘇神社までの道路沿い、道路の地割れや倒壊した建物はおろか、屋根瓦が少しずれて一部ブルーシートや補修をしている家はたまに目に入るものの、外から損傷が分かるような家はありませんでした。しかし阿蘇神社の表示のある駐車場に車を止め、境内に入った途端、景色が一変です。
遠くからでもすぐにそれと分かるほどの、大きく立派な神社の屋根が崩れ落ち、水平であるべき棟木があちこちを向いて折り重なっていました。境内には地元の人だけでなく、観光客などもいましたが、多くの人が言葉を失い、正面に設置された「復興の奉賛金」の申し込みに記入、浄財を寄付されていました。
私もわずかながらですが、どこに行くか分からない義捐金よりも、この神社の復興に直接使っていただきたいという思いを込めて、奉賛させて頂きました。


一方で、驚くのはこの駐車場の周辺、境内脇の
老朽化した空き家のような建物でさえ、外部から見て大きな損傷を受けているように見えず、古いブロック塀も倒れていませんでした。トタン屋根やセメント瓦でさえ、地震の影響を受けているようには見えません。もちろん築年数の浅い店舗併用住宅などは、すでに通常営業をしているようです。
この状況を見ると、以前の感覚であれば「社寺仏閣は太い梁・柱を使い、宮大工が金物を使うことなく、木組みだけで造ったものだから、接合部は木同士のめり込みやしなやかさがあり、地震の揺れを吸収する」という、日本の伝統建築の賛美、宮大工の技術に驚くところですが、逆に
「屋根の重さ」や「重心の高さ」がネックになったということが疑われます。
もちろん、シロアリの影響や活断層の影響がなかったとは言えませんが、地盤を固めることも含めて、先人の宮大工が周辺の民家よりも地震に弱い建物を建てたとは思えません。どれほど太い材料を使い、腕のいい宮大工が建てても、今回のような地震の強度を「加速度(=ガル)」で測る直下型地震は、「軽いこと」が最も武器になるということが改めて分かりました。
それは相撲取りがひざを痛めたり、赤ちゃんがマンションから落下して無事だったり、車のように「重くて固い」ほど、事故の損傷が大きいことからも分かります。


一の宮町から東回りに高森町、南阿蘇村へと向かい、途中阿蘇の郷土料理「赤牛のステーキ丼」を食べて、私の好きな『白川水源』まで足を延ばしました。
地元ホームセンターのナフコでも買い物をし、周辺の家々、お昼を食べた地元のお店でも震災の状況を確認してみましたが、意外にも「建物自体はそれほど大きな損傷はなかった」ということです。恐らく活断層が益城町から、大きな山崩れがあり阿蘇大橋が流された赤水周辺から、阿蘇山自体を走っているから、
数キロ離れるだけで、建物が倒壊するほどの地殻変動には至らなかったと考えられます。
帰路につく道中、九州自動車道の『植木IC』に向かう菊池市郊外のほうが、屋根にブルーシートを架けた被災した家を数多く見たので、実際の振動は地盤や土壌の影響が大きいことも示唆されます。

通行止めや迂回路など、渋滞になった道の先の被災地まで足を踏み入れるのは、復興の邪魔にさえなるので控えて、阿蘇を後にしましたが、私が巡った地域は日常を取り戻しつつあり、従前のように
観光客として訪れて、外からお金や仕事を少しでも発生させることに寄与することが、一番の復興支援になるように感じました。
阿蘇根子岳をバックに、藁で作られたくまモンもどきの人形も、ホッとする景色になっていました。これからも被災地の方々を応援したいと思います。
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