2016年07月13日

土地の振動と建物の揺れの差が分かる熊本地震レポート

益城町の様子−1熊本地震からおよそ3ヶ月、ようやく落ち着きを取り戻しながら、被災の状況も残る熊本県益城町の中心部まで足を延ばしてきました。特に私が注目したのは、業界専門紙で取材されていた建物被害状況で、単に建物自体の『耐震性能』や『築年数』よりも、むしろ立地条件によって建物の揺れ方が異なり、それが被害の差になったのではないだろうかと感じたことです。

その仮説を確かめるために、記事中の建物写真や航空写真から場所を特定し、実際に自らの目で確かめてきました。

この画像を見ても分かる通り、白い矢印で示した「ブロック塀」などは、古い7段積みのコンクリートブロックなので倒れていても不思議ではありません。私が立っている道路に面した両側の建物は、せいぜい「要注意判定」で、他のブロック塀も倒れておらず、補修すれば住めそうな建物ばかりでした。

にも関わらず、奥の傾いた建物が見える半径50m程度のエリアでは、去年(2015年)建て替えられた新築の住宅が、何とかそのままの形で残り『要注意判定』の黄色い張り紙をされている以外は、2006年の新しい耐震基準で建てられた住宅も本震で倒壊し、すでに周辺の建物はほとんど取り壊されて、解体された残材が一部残されているという状態でした。

益城町の様子−3益城町の様子−2地震は文字通り『地盤の揺れ』であり、同じ町内会であっても、それぞれの敷地内の土地の振動と、その揺れが建物にどう伝わったかによって、建物被害に大きな差が出ています。

それは「建物自体」の築年数や工法、耐震強度というよりも、むしろ同じ震度7であっても、敷地による地盤の揺れ方や、基礎から土台にいかに揺れが伝わったのかということが大きいように感じました。被害の大きなエリアは、ブログで公開するには衝撃も大きく、すでにかなり片付けられて実際の状況が写真では伝わらないので、少し移動して遠くからそのエリアが見える場所に移動しました。

その画像が上の2枚ですが、手前の住宅は多少古い建物も含めて、それほど大きな損傷はなく、その奥の被害の大きかったエリアでは、まだ片付けられずに傾いたままの建物が数多く見えます。3枚の写真は半径300m以内の同じ町内会ですが、建物が建っていた場所によって本当に被害の差が出ていたのです。

だから大事なのは土台から上の耐震強度(耐震等級がいくつか?)よりもむしろ、土台と基礎、そして基礎と地盤をどのように揺れを想定して補強し、土地の振動が建物自体の大きな揺れにならないよう、いかに振動を抑制するかが重要なカギを握るような気がします。

それは単純に「免震」とか「制震」といった、コストアップに繋がることでもなく、益城町でも過半数以上の建物が古くても補修で済むように、すべての建物に義務付けるような「耐震補強」でもないでしょう。もっと「土台から下のみ」に専門家の知見と新しい技術を投入すれば、かなりの地震災害は抑制できるのではないかと思います。

マスコミ報道や専門紙などは、どうしても被害の大きな所にフォーカスし、衝撃的な映像や写真を我々は目にします。しかしその画像によって、すべての新築住宅の「構造躯体」に高い耐震性能を義務付けし、古い建物は「既存不適格」になってしまうという判断は、安全な地盤に建てられた家であれば、もしかしたら過剰なコスト負担を強いられることになるかも知れないのです。

すべては、日本の住宅や都市計画が、「土地」と「建物」を登記上も価格も切り離し、監督官庁も「土木」と「建築」に分けてしまったことが、悲劇なのかも知れません。だから土地には消費税が掛からないのに、建物に消費税が掛かるといった、訳のわからない負担まで購入者が負い、被災したら二重ローンで苦しむ国民を出しているのです。

その上にさらに建築基準法の耐震強度を高めることを、本当に一般市民が一律負担すべきものなのか、建築業界だけで答えを出す問題ではないように感じました。

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