『私案』として書いた「目指すべき姿はショートウェイ・シティ」の詳細説明を、5つのテーマに分けて広島市役所に提案しました。今回はその中の第一番目のテーマです。
テーマ−1:人口密度のコントロール
第二番目の「公共交通網の将来ビジョン再構築」は、次回投稿します。人口動態予測などからのコーホート分析や、ビッグデータなどを活用し、まずは現状の町丁別(自治会・町内会単位)の人口推移、世帯数、人口密度などを把握したい。生活密着型で地域の人が経営する地元商店が成り立つ人口密度が仮に120人/haだとすれば、その半数以下の地域では、車やバイクなどの移動手段を使わなければ買い物にも行けず、高齢化が進むと買い物難民が増えるリスクを抱える。
車で買い物に来る人たちを迎える食品スーパーや日用品のお店は、一定の広さの駐車場が必須となる。都心部に近い旧市内であれば、地価が決して安くない広島市内で、都市の”有限な資産”であるその土地は、広い駐車場が必要なことで住民が住むことも出来ず、雇用も発生しない低利用の土地活用になる。しかも人口密度も下げてしまい、地価負担能力を超えた商売も難しくなって、郊外に出来た超大型店との競争に敗れていくということが繰り返されてきた。このような現象は、中心市街地の「商店街」が、本通り商店街を除いてシャッター街化したということだけでなく、空き店舗や老朽化した住宅などがコインパーキングなどの駐車場用途になってさらに人口密度の低下を招いていることと重なる。高齢者が、歯が抜け骨粗鬆症になるように、街自体も高齢化、スポンジ化が進んでいるのが現在の姿だ。そのために法律化された『中心市街地活性化法』や『都市計画法の改正(土地利用規制)』『大規模小売店舗立地法』の”まちづくり3法”が、十分生かされず状況は悪化する一方だったため、今回の『立地適正化計画』では、過去の延長線上ではない取り組みが求められる。
中心市街地以外の都市近郊の街、JR駅や広島電鉄の電停を中心とした駅近くの既成市街地では、生活密着型のサービス業は徒歩圏で成り立つくらいの人口密度、年齢構成を維持することが重要だ。それによって「移動に時間も費用も掛からず」「お金が地域外に流出しない」という居住環境が整備できる。地域住民にとっても経済的メリットが生じ、地元で働ける雇用者をつくって、地域外へ通勤する車の量を減らすことにも繋がってくる。どのような商売が、どのくらいの人口密度で成立するか、指標を示したい。
現在、都市近郊の既成市街地(=都市機能誘導区域)は、現状高齢化が進んで、通勤する人が減っている地域と、マンション建設などの共同住宅の増加によって、通勤や通学する人が増えている地域が”まだら模様”のようになっている。特に都心に近く新駅ができた居住一等地である中区基町で、公営住宅に入居する「通勤しない人々」の高齢化が進み、市にとって経済的価値が逓減するばかりか、生活保護や介護費用などの福祉予算まで割いて、収益が出ていない現状は、長期の都市ビジョン、立地適正化計画の中での将来構想を避けては通れないだろう。
各地域で実態把握をしたうえで、前出の通り一定の人口密度によって、通勤せずとも地域で起業や開業する事業者を増やし、世代交代が起こって地域が活性化するというシナリオも必要だ。統計データによれば、広島市中区でも空き家率が20%を超えているという。老朽化したマンションや公営住宅の空室は『限界マンション』とも呼ばれ、今後さらに深刻な状況になる。
画像は、広島市の都心部の一等地、基町地区の公営住宅の一角にある商店街。すでにほとんどのテナントは撤退し、シャッター外になっていて、入居者も5割が65歳以上となっています。